「富士山に登りたい」
そう思ったのは写真家の山内悠という人の「夜明け」というこの写真を見たからだ。
山小屋に600日間こもって撮影されたというこの写真に衝撃を受け、自分もこんな写真が撮りたい!と思って悶々としていた時に調度良く友人からの誘いを受け、人生初の富士登山をする事になった。
2011年8月7日
行く途中の車内で前が見えない程の豪雨に見舞われ早くもやる気を失いかけたが、富士山に到着する頃には雨も小降りになっていた。
夕方6時過ぎ、登山開始。今回は須走口というコースの五合目から登り始める。
木々の間を30分ほど登った所でこんなに辛いものか、と早くもリタイアを考えたが、富士登山経験者の友人に疲れにくい歩き方を教えて貰ってから、かなり楽になった。
ゆっくりと擦り足気味に歩幅を狭くひたすら歩みを進める。
疲れたら休んで呼吸を整える。それを何度も繰り返しながら黙々と山頂を目指す。
六合、本六合、七合、本七合と、各山小屋で30分以上休憩。七合目で食べたコンソメパンチがやたら美味く感じた。
そして八合目で4時間程、寒さに震えながら一睡もせず御来光を待ち、撮影。
太陽が出て温かくなった所で登り始める。
段々歩きにくくなって行く山道。それにつれ休憩する頻度が多くなりつつもゆっくりと本八合、八合五勺、九合目をクリアして行く。
自分は何でこんな辛い事をしているのだろう、なんて思いながらもひたすら身体を動かし、最後の九合目から山頂までの急勾配を這いつくばりながら必死によじ登り、ついに頂上へ到着。
もっと感動的な感情を期待していたのだが、疲れ過ぎてほとんど達成感というものが湧かず、こんな山二度と登るまいと誓っただけなのであった。
下山の道のりも地味に長く、何度も嫌気が指したが、また何度も何度も休みながら3時間以上かけてようやく五合目まで辿り着いたのであった。
山内氏の作品には程遠いけれど、こうして死ぬ思いで撮影した写真をご覧下さい。
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